「華氏911」(テレビ東京_5/12_27:20〜29:00)

【ストーリー】
ドキュメンタリー映画なのでストーリーはありません。
ジョージ・W・ブッシュの大統領再選阻止キャンペーンフィルム
カンヌ国際映画祭パルムドールを受賞

【感想】
ボウリング・フォー・コロンバイン」で銃社会に切り込んだマイケル・ムーアが次の標的に選んだのはジョージ・W・ブッシュ米国大統領と愉快な仲間達だった。
ドキュメンタリーは公平性が大事とは誰かが言ったらしいが、監督は自分の目前にある事実に対して感じ考えたことをストレートに映像化したため表現される内容には大きな偏りがある。
ブッシュ一族や閣僚達がサウジ王家と懇ろな事実を突きつけてみたり、彼等の発言をモンタージュして茶化して如何に彼等が無能だと思いこませる前半は絶妙な編集だなと思いました。
後半はイラクで手足を失った負傷兵や遺族の沈痛なインタビューや海兵隊のリクルーター貧困層が集まるショッピングモールで志願兵を募る映像など前半ほどの痛快さは無くてその切実さが重苦しく感じた。
ブッシュ大統領批判で終始すると思われた内容は、終盤に入ってから貧困層が食い物にされているという事実を突きつけてくる。爆撃されたバグダッド、生活のために志願する米国地方都市の貧困層と場所は違えど命を国家に差し出さざるを得ない境遇は違わないのだ。
そんな彼等を戦場に送り込み自らの家族は決して戦場に送らない富裕層と政治家にマイケル・ムーアは静かな怒りを感じているようだった。
ムーア監督作品を見ていつも感じるのが編集の巧さとBGMのセンスの良さだ、終戦宣言をするためにわざわざ空母に着艦してきたブッシュ大統領のシーンでは往年のTVドラマ「The Greatest American Hero」*1のテーマ曲を持ってくる辺りにもの凄い皮肉を感じた。正直左派の人はキライなんですけどこの監督だけは別格だな
ところでホントにこの作品はパルムドールを受賞したの?

*1:ウィリアム・カット主演で「アメリカンヒーロー」という邦題で日本テレビが1985年に放送