衛星アニメ劇場「ラーゼフォン多元変奏曲」(NHK_BS第2 25:10〜27:07)

2002年1月〜9月までフジテレビジョンで放送されたアニメーション作品を劇場用に再編集して公開された。
再編集とはされているが個々のキャラクター設定やエンディングの変更があるためTVシリーズを見た人にはリメイクに近い印象を与える。NHK_BSハイビジョンでは8月に先行して放送されています。


【ストーリー】
西暦2012年、突如出現した異次元からの来訪者「MU」によって隔離されてしまった東京。対MU戦略研究機関「TERRA」に所属する29歳の女性「紫東遙(美島遥)」は東京に残されたかつての恋人、神名綾人を救い出そうとする。しかし、東京は「MU」によって時間の進行すら変えられた別次元の世界となっていた・・・時空の断層に引き裂かれた恋人たち。試される人の心の真実。そして綾人が乗り込む巨大な神像ラーゼフォンと異形の兵器ドーレムとの壮絶なバトル。
本作は、2002年の1月から9月まで放送された人気テレビアニメシリーズ「ラーゼフォン」に新たなカットと視点を加え、大胆に再構築した劇場公開版。       
(2003年公開)


【感想】
ベテランメカデザイナー出渕裕が監督を初めて担当*1したことで話題になったのは記憶に新しいが、劇場版では後に「交響詩篇エウレカセブン」で監督を務める京田知己が担当した。
TVシリーズは期待していたのですが、放送開始当初は平日夕方に第11話以降は深夜帯行きとフジテレビの手酷い仕打ちの為に録画を度々失敗して朝比奈浩子が惨い死を遂げる「第19楽章ブルーフレンド」を最後に鑑賞を挫折した苦い記憶が甦ります。


感想は一言にまとめると凄くまともに作られた総集編といった感じだろうか?
とにかく予想を大きく裏切るようなヒネリは無かったのが残念であり良かった。
細かいキャラ設定が変更されているが大幅な変更は、物語の主観が「神名綾人」から「紫東遥(美嶋遥)」と「神名麻弥」に変更されたこと。それによってTVシリーズの時みたいにストーリー上の混乱が無くなり、初恋の男性と添い遂げたい一途な乙女心を持つ29歳の女性と息子を取り込もうとする母のエゴを中心としたシンプルな物語になった。


その視点変更の所為か全編を通して遥と綾人のラブな展開になっていて照れてしまった。特に監禁されている部屋でセックスを始めちゃうシーンは監視カメラが廻っていてもお構いナシみたいな台詞を女性側が言ってしまって更に気恥ずかしかった。


あと、サブヒロインに格上げされた「朝比奈浩子」の死へのエピソードはTVシリーズの第19話と同様に切ない・・・
MUへ覚醒することで失われていく記憶をメモに書き留めていく描写が観ていて辛かった。しかもこの後に悲しみが癒されないままに前述の遥との性交シーンに雪崩れ込むのだから余計に泣けてくる。


終盤は遥が過去の記憶に励まされて人ではなくなった綾人を母のエゴから取り戻す展開になるが、冒頭の「神名麻弥」が14歳の「美嶋遥」に「これからも綾人のことをお願いしますね」という一言がこれほど重要な意味を持っていたとは思いもしなかった。TVシリーズも最初からこうしておけば良かったのになと思った。
美しい思い出に包まれて亡き綾人と旅立つ老成した遥のラストは坂本真綾の唄うEDテーマと合わせて暖かな気持ちにさせられた。


それより西武線沿線の井草辺りに住んでいると思われる遥と綾人の初デートの思い出が、JR中央線阿佐ヶ谷駅前と井の頭公園なのは何故だ?*2
買ったまま本棚に置いてある神林長平のノベライズも読まなくては!

*1:実際には機動警察パトレイバー・後期OVAシリーズ第14話「雪のロンド」(1991年)が初演出

*2:両方ともアニメスタジオが集中している地域なのでロケハンしやすかったのかと思われます。