木曜洋画劇場 「es-エス-」(テレビ東京_9/23_21:00〜22:54)視聴完了 

【ストーリー】
 新聞広告で集められた被験者を「看守役」と「囚人役」に分け、模擬刑務所で生活を始める。刑務所内では看守は囚人を大人しくさせて2週間見張り、囚人は看守には逆らえないが自由に過ごすことになっている。
実験におけるルールは以下の通りで、基本的には暴力行為を禁止

・囚人はお互いに番号で呼び合わなくてはならない。
・囚人は看守に対して敬語を使わなくてはならない。
・囚人は消灯後、会話を一切交わしてはならない。
・囚人は食事を残してはならない。
・囚人は看守の全ての指示に従わなくてはならない。
・ルール違反を犯した場合、囚人には罰が与えられる。

 高額なギャラに魅せられて応募する人が大半の中、元記者の主人公が被験者に応募し実験を記事にしようとして他の被験者たちをあおり問題を起こし被験者達は少しずつ狂いだして凄惨な事件へと発展していく・・・

【感想】
 閉鎖環境でそれぞれの役割に従ってロールプレイを行うと人間はどうなるのか?
看守側は定められたルール(監獄における権威)を拡大解釈して秩序維持のために凄惨な暴力行為に及ぶ、主人側もストレス過敏になり躁鬱状態になるものが現れる。
 人の意志や行動はその人の与えられた環境でいくらでも変化する可能性があるとされている。
 偽善的な話になるが、人の意志や人格を左右するのが監獄のような特殊な環境だけではなく、家庭・学校・職場など私たちのごく一般的な生活環境にもあることを忘れては行けない。
 また、この映画の描いた「リアルっぽさ」が5月に暴露されたイラクアブグレイブ刑務所での捕虜・囚人虐待事件という「リアル」が追い抜いてしまっているのが何とも皮肉な話だ。
 この映画の監獄実験とは違うが「アイヒマン実験」というものがあって、権威に対する服従が善良な人間が簡単に残虐になるかを証明しようとした実験があります。
興味がある人は調べてみるとおもしろいかもしれません。

 最後に登場人物についてちょっとダメ出しをさせてもらうと、主人公と同房の無愛想な軍関係者は物語上不要だったと思います。元軍人の肩書き無しで普通の人で十分でしょ。

【補足】
 この映画のモデルになったのは1971年に米国スタンフォード大学で行われた「監獄実験」です。
 映画と同様に複数の被験者を当人たちの意思と無関係に「囚人」と「看守」のグループに分け、看守に囚人を監視監督させる。
 しばらくすると看守グループは囚人たちに冷淡な態度をとるようになり、小突いたり乱暴に扱う行動さえ見られるようになる。
 逆に囚人グループは、卑屈で感情に乏しい状態に陥っていく。研究者が実験のため便宜的に与えた「役割」が、被験者たちの人格をあっという間に乗っ取って、被験者たちの行動を役割に相応しいものへと導いてしまった。
 あまりにも劇的な結果が出たため、実験は予定より短期間で中止されたという。
 そして現在もこの実験における内容について訴訟が継続されている事実がある。